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#グラフィックデザイン

「温故知新」

2022.06.09

「温故知新」

今、季節は初夏。晴れる日が多く湿気も少ないので、爽やかで一番過ごしやすい季節です。特に通勤時、車窓から見える景色は田植えを待つ田んぼの水面に残雪の山々が映り込んでとても美しく癒されます。田植えといえば、東北地方には様々な「田植え踊り」が存在します。山形県内だけでも現在活動しているのは36団体位あるそうです。起源が古いものだと300年以上も前になるようです。
15年程前、ある広報誌の取材で県内に伝わる民俗芸能の特集を約2年に渡り行ったことがあります。確か「未来伝承」というテーマで、小学生の子どもたちを中心に地域に伝わる民俗芸能を、親や祖父母の世代から受け継いでいく様子を取材・撮影して紙面に掲載していました。何百年も受け継がれてきたものを次世代に伝えていくという取り組みは素晴らしいことで、取材をしていてとても感銘を受けた覚えがあります。その中で特に印象に残ったのは衣装デザインの素晴らしさでした。デザイナーの仕事柄どうしても目が行ってしまう部分です。先ず驚いたのは民俗芸能の衣装はカラフルで柄も個性的なものが多く、もの凄くファッショナブルなことです。そして文句なくカッコいい!今見ても全然古さを感じさせず、寧ろモダンなデザインと言っても過言ではありません。最近人気の時代劇アニメやゲームに出てくるキャラクターが身に着けているような衣装といえばイメージしやすいかと思います。私たちが普段仕事でデザインを考える場合様々なものを参考にしたりするわけですが、新しいものを生み出すには歴史や古いものから学ぶことが多いのではないでしょうか。「温故知新」の諺にあるようにデザイナーはこの言葉を意識しながら、さらに‟良いもの“を創っていければ・・・と思います。

アートディレクター T.KUDO

水島新司先生に感謝!

2022.01.20

水島新司先生に感謝!

私の子どもの頃の夢はマンガ家になることでした。暇さえあればマンガばかり描いていて、紙だけでは飽き足らず、居間にある茶箪笥の硝子戸や近所のブロック塀、アスファルトの道路等、あらゆる所に落書きをしては怒られた覚えがあります。とにかく描くことが好きで、それは現在も変わっていません。
先日、大好きだったというより自分の人生に大きな影響を与えてくれたマンガ家、水島新司先生が亡くなりました。「ドカベン」や「あぶさん」「野球狂の詩」等、世代を超えて親しまれた名作を生みだした方です。水島先生以前の野球マンガといえば、魔球を操る人間離れした能力を持つピッチャーと天才的なバッターが戦国時代の一騎打ちのように戦うみたいな、ある意味格闘技かSF的ともいえる作品が多かったと思います。野球は9人でやるのに主役とライバル以外はその他大勢という感じ・・・。それはそれで子どもの頃は楽しんで見ていたのですが、水島先生の作品が登場してからは本当の意味で野球というものの素晴らしさや面白さを理解できたように思います。特にスポーツにおいての団体競技の場合、1人か2人の天才の力だけでは勝つことは中々難しいといえます。様々な個性が協力し合って、それが機能してこそ上手くいくわけです。私たちの仕事も様々な分野のスペシャリストがいて、それらの個性が最大限に発揮され融合した時に良い作品が生み出されるという、団体競技にとても近いものがあると思います。
水島先生の作品で自分がデザインの道に進むきっかけのひとつになったことは間違いないし、仕事をする上での心構えや人間関係等、沢山のことを学ばせていただきました。
後で知ったことですが、作品は想像だけで描いていたわけでなく、自ら野球場に足を運び選手や裏方である職員の方たちにも丁寧な取材を行ってから作っていたそうです。だからこそ説得力のある作品になるわけですよね。デザインの仕事も同様で、綿密な準備とプロセスを経ることでクライアントに喜んでいただけるものができるのだといえます。
水島先生の訃報を知って、久々に本棚から昔のファイルを引っ張り出して見てみたら、学生時代に模写したものが数枚残っていて、とても懐かしさが込み上げてきました。
最後に、叶わない希望ですが大谷選手vs山田太郎や岩鬼、殿馬とかワクワクするような対戦を、もう一度先生の作品で見たかったなぁ。
水島先生本当にありがとうございました!
アートディレクター T.KUDO

*写真は、筆者が学生の頃に模写した水島先生の作品。