デジタル広告の世界は、今や「企業が発信するメッセージ」よりも「ユーザー自身のリアルな体験」のほうが影響力を持つ時代になったと日々感じます。
企業の広告はどうしても“売りたい”気持ちが前面に出がちですが、UGC(ユーザー生成コンテンツ)を活用すれば、もっと自然で信頼性の高いマーケティングが可能になります。
UGC(User Generated Content)とは、企業ではなく、一般ユーザーが自発的に生成・発信するコンテンツのこと。
たとえば、Instagramに投稿された「#今日のコーデ」のファッション写真、ECサイトのレビュー、YouTubeのレビュー動画、X(旧Twitter)での体験ツイートなど、いわば「生活者のリアルな声」です。
企業の広告と大きく異なるのは、その「リアル感」と「共感性」です。
企業が伝えるメッセージにはどうしても宣伝の意図が含まれますが、UGCはあくまでユーザーの視点から発信されるため、広告感がなく、より信頼されやすいです。特に若い世代は「広告を広告として見ること」に抵抗を感じるため、UGCの活用はますます重要になってきます。
「うちの商品・サービスについてのUGCが少ない…」と悩む企業も多いですが、そもそもユーザーが自発的に投稿したくなるような仕掛けを作っているでしょうか?
例えば、「#スタバで休憩」「#guコーデ」のように、ユーザーが自然に投稿できるようなハッシュタグを用意したり、プレゼントキャンペーンを実施したりすることで、投稿を促すこともできます。
また、UGCを集めやすい特徴として、以下のようなものが考えられます。
自社の商品・サービスが「ユーザーにとってSNSでシェアしたくなるか?」という視点で考えてみましょう。
せっかく集まったUGCを活かさないのはもったいない。企業のSNS、Web、広告に組み込むことで、より多くのユーザーの目に触れさせることができます。
たとえば、あるケーキ屋さんでも、Instagramの公式アカウントでユーザーが投稿したケーキの食べた感想やなどの写真を積極的にリポストしています。これにより、投稿者は「自分の写真が認められた!」と感じ、ブランドへの愛着が深まり、また、新たなユーザーも「自分も投稿してみよう」と思うきっかけにもなります。さらに、投稿を見た他のユーザーが共感し、さらなる広がりへと繋がります。
一方、広告運用にUGCを活用する方法もあります。例えば、企業が作った広告バナーよりも、実際のユーザーの口コミや写真を使った広告のほうがCTR(クリック率)が高くなる傾向もあります。特に、InstagramやTikTokの広告では、企業が制作したクリエイティブよりも、ユーザーが作成したコンテンツをそのまま使ったほうが成果が出る場合もあります。
UGCはポジティブなものばかりではありません。時には、批判的なレビューや不満の声が含まれることもあります。しかし、企業がそれを適切に活用すれば、むしろブランドの信頼度を高めることができる。
例えば、ある飲食チェーンでは「接客が冷たい」といった口コミが増えたことをきっかけに、スタッフ教育を強化し、その過程をSNSで発信しました。結果的に、「改善しようとしている姿勢」が評価され、ブランドのイメージ向上につながりました。
企業側がすべての口コミをコントロールすることはできませんが、UGCを通じてユーザーの声に耳を傾け、適切に対応することがブランド価値を高めるポイントとなります。
UGCは単なる広告素材ではなく、ブランドとユーザーの絆を深める大切な橋渡しです。
企業が「ユーザーにUGCを投稿してもらうための仕掛け」を作り、「公式コンテンツとして活用」し、「ネガティブな声にも向き合う」ことで、より強力なマーケティング施策に繋がります。単に「UGCを使う」のではなく、「UGCを育てる」視点で戦略を設計していく必要があるでしょう。
Sales Promotion Advisor S.IZUTA