我々はどちら側?

「フォードvsフェラーリを見て感想を述べよ」

ある日社長から課題を出された。

社長指示である。当時公開されたばかりの映画を早速レイトショーにて鑑賞した。2時間を超える長編であったが実話ベースでもあることから、いろいろと考えさせられる内容であった。

題名からして単純に車のレース映画かと思うがちょっと違う。レースを描いた映画なのは当然だが、フォードという大企業(主人公側)とフェラーリという貧乏・・・いや中小企業の戦いの話である。

遥か彼方までラインが続くフォードの大工場は凄い。が、従業員はみんな不機嫌だ。フェラーリの工場は本当に小さい。しかしながら完璧に整頓された工房のようにひとりひとりが誇りを持って働く姿が印象的だ。

フォードとフェラーリ、どちらも歴史に名を残すブランドである。

しかしブランド構築にいたる目的もプロセスも、何もかもが違う。

自分たちが何者で何を目指しているのかを自動車という形で表現しているのは一緒でも、一方は販売による利益追求、かたやすべてがレースに勝利すること。両社ともブランディングは完璧である。結果として自動車という完成品が全く違う価値になっているのがとても興味海深い。

主人公の敵は外部だけとは限らない。内部の敵が最大のカベだったりもする。劇中では対フェラーリよりも実際こちらの戦いのほうが過激である。

大企業ゆえの組織の壁に、本来の目的が翻弄されていくジレンマ。そのジレンマを理解するのが、ライバルだったはずの相手フェラーリなのは心憎い。

ラスト近く、レースを終え同じ目的を志す3人だけが交わす無言のセレモニーはお気に入りの場面だ。

それはそうと、私は車好きなので主役のフォードGT40よりライバルのフェラーリ330P3に目を奪われてしまう。性能は後発のフォードが有利だし会社のサポートも万全だ。レースは資金力ともいわれるがその時点でもフェラーリに勝ち目はない。

実際レースはフォードGT40の1位2位3位独占という結果を迎える。それでもフェラーリは強い。そして美しい。

いみじくも主人公たちはパドックの前を横切るフェラーリ330P3をみてため息混じりにこうつぶやく。「美人コンテストじゃ(俺たち)勝てねぇなぁ」

「我々はどちら側に向かうのだろうな」ぼそっと社長がつぶやいた。

社長、やっぱり私、たとえ規模は大きくなくても日々誇りを持った仕事をしていきたいです。

目先の勝負に左右されない独自の存在感。それがブランドだと周りが認めてくれるようなフロットを目指して。

Brand Control Adviser  A.MAEDA


その他の記事を読む