先日、自宅のポストにA4・8ページの情報誌が投函されていました。その冊子は、町内の様々なジャンルのお店を紹介するもので、有志の人々で「町内を盛り上げよう」という目的で企画されたものでした。
正直その仕上がりは、お世辞にも良いとは言えず、「うわ〜、あらら〜!」と、つい口からこぼれました。おそらくですが、予算をかけずに自力でできる範囲で制作したのかな……と想像できます。飾りや写真は変形、イラストは背景が残ったまま配置され、文字は手書きとフォントが混在...。まるで小学校の頃に切り貼りして作った学級新聞を見ているような、手作り感あふれる冊子でした。
しかし、めくり読み進めるうちに、その紙面からじんわりと温かい「想い」が伝わってくるのです。地図には分かりやすくお店の場所を番号で記し、業種・サービス、営業時間等、一つひとつが丁寧に記されています。紹介文の言葉の端々からは、町内を盛り上げようと皆が力を合わせ、試行錯誤し取り組んだ痕跡が残っていました。この冊子を手に取るまで、家の近所にこんなに沢山の良さげなお店があったことを、私は初めて知りました。
見た目は、おしゃれ・かっこよさとは対局にある冊子ですが、これは十分な役割を果たしている!と感じました。そして、この手作り感満載の「体裁」が、かえって押し売り感がなく、すっと心に入ってきます。どんな人たちが作ったのだろうか。この冊子に載せるために、一軒一軒お店を周り、情報を集め、「この町内を盛り上げたい」という熱い想いで皆で作ったのだろうな……と想像してしまいます。
私は、この冊子を見て、感動すら覚えてしまいました。
そして、思いました。これは、立派なデザインだと。
私は長年、デザインを生業としてきたため、つい「体裁良くつくること」が常識かのように型になって染み付いてしまっています。しかし、デザインには目的があります。問題や課題を発見し、それを解決するための企画・設計があり、それを実現するためにターゲットに合わせたクリエイティブで情報を伝え、して欲しい行動をしてもらう役割があるはずです。「このターゲットに合わせたクリエイティブ」=「体裁がいい」とは限らないのです。体裁だけが良くても、結果、ターゲットに響かず、全く目的を達成できないものは、デザインとは呼べないと私は思います。
この冊子に、久しぶりに頭をガツンと殴られたような衝撃を受けました。そして、同時にワクワクが心から湧いてきました。「想い」と「人」をつなぐデザインのバリエーションは、まだまだ無限にあるのだな…と。私たちが提供すべき価値は、単なる「見栄えの良さ」ではなく、その裏にある「誰かの想いを伝える力」なのだと、改めて教えてもらった出来事でした。
Sales Promotion Adviser M.Minamide