シニア世代は、どんな気持ちでモノを選び、買い物を楽しんでいるのでしょうか——
もちろん、シニア世代にもさまざまなライフスタイルや価値観がありますが、日常のなかでそのヒントを感じることがあります。
私の母は、季節の変わり目になると「〇〇ちゃん(孫)のお洋服買いに行かなきゃ!」と言います。また、「いちごを買ってきたよ〜」「お土産だよ〜」と、ほぼ毎週のように何かしらプレゼントをもって遊びに来てくれます。実母とはいえ、申し訳ないと思う気持ちもありつつ、孫のための買い物にワクワクしている母の姿を想像すると、“誰かを想って買う”——そんな温かい消費行動こそが、今のシニア消費のひとつのかたちなのかもしれないと感じます。
母の買い物は「誰かのため」であることが多いように思います。「このお洋服、◯◯ちゃんに似合いそう」「いちごが好きだから買っていってあげよう」、旅行先では「お土産は何にしようかな?」と、孫の笑顔を思い浮かべながら、幸せな気持ちで選び、カゴに入れているのでしょう。そして実際に、喜ぶ孫の顔を見て、嬉しそうにしている母の様子を見るたびに、“モノを買う”という行為以上の意味を感じるのです。こうした消費スタイルは、母に限ったものではなく、シニア市場全体にも共通する傾向ではないでしょうか。(ちなみに我が家の父はというと、趣味や旅行など、ほとんどが「自分のため」の消費。母とは対照的です。こうした違いからも、“誰に届けたいのか”というターゲティングがとても大事です)
シニア世代は、単に「自分のために贅沢をする」よりも、「家族とのつながり」や「誰かを喜ばせること」に重きを置くという側面もあるようです。だからこそ、商品やサービスの開発・プロモーションにおいても、「誰かを思い浮かべながら選ぶ楽しさ」に寄り添うことが、より深く届くカギになるかもしれません。
“誰かの笑顔を思い浮かべて選ぶ”——そんな心の動きに寄り添う提案が、シニア市場を拓くひとつのヒントになるのではないでしょうか。
SPA/Designer K.Ichikawa