幼い記憶はいつもモノクロームだ。でもわずかだが天然色もある。金色の顔を持つちょっと不気味な塔もそのひとつ。
1970年代の幕開け、大阪万博は来たる日本の未来を謳う夢の国のまつりだった。科学が約束する明るい世界は目眩がするほど魅力に溢れていた。そのシンボルとして君臨したのが岡本太郎渾身の作「太陽の塔」だった。
あれから半世紀以上が過ぎた。残念だが、あのとき憧れた未来はついに来なかった。いや正確にいえば、全く来なかったわけではない。腕時計型トランシーバーやカメラはスマホで実用化されたし、クルマの自動運転も実用化されてきた。洗濯機は全自動だし、テレビも各モバイルでみることができる。けれど、あの日見た未来とは何か違う。あの日憧れた未来はもっときらきらした未来だったはずだ。夢見た未来はいつの間に過ぎ去っていたのだろうか。
小学生にあがった頃、衝撃的な時計が売り出された。時計といったら針が文字盤を回るもの、という概念がふっ飛んだ。なんとその時計は指針がない。赤い光が数字を作り、盤面に時間を刻むのだ。発光ダイオードという部品が作る光の世界。そいつは異次元からやってきた時計だった。だが腕時計など小学生が持つものではない時代。憧れだけが募ったものの実物を一度も見ることなく、記憶もやがていつしか片隅に追いやられた。
ところが人生とはわからないもの、2019年突然それが再販されたのだ。発光部分に当時とは若干の違いはあるものの、夢に見たまさにあの時計だ。ぐずぐず悩むほど私は子供ではない。当然購入である。
最早腕に着けた金色の時計は、ずっしり重い。・・・だいぶ重い。金色は豪華・・・だがあまりにぴかぴか過ぎて現代ではかえってチープに感じる。いやそれより、ものすごく使いづらい。・・・全く機能的ではない。運転しながらでも見やすい盤面の角度にしたというが、運転中に時間確認できない。電池の消耗をおさえるため、ボタンを押した数秒間しか発光しない仕組みなのだ。(さすが運転中は運転に集中!というセーフティの具現化・・・ではないよなぁ)そして友人に見せると一様に購入した値段に驚く・・・みんな1/10位の金額だと思うらしい。
だが、そんなものは枝葉末節。相対評価など全く気にならないのである。なにしろ自分自身にとっての評価は無限大、絶対評価だからだ。
『世の中に存在するすべてのモノには、それらにしかできない存在意義がある。 その「存在意義」を「約束する」がブランドの本質である。』
現代人が価値を認めなくても、あの日を経験した人には確かな存在だ。それは幻ではなかった、と後世につないでいく約束、それもブランドなのだ。
金色の時計は太陽の塔だ。
ボタンを押すと今もこころがときめく。腕に光る数字は、今もあの日のきらきらした未来のままだ。そいつはとうに過ぎ去った未来だけれど、半世紀近くたってようやく腕につけることができた奇跡である。
Brand Control Adviser A.MAEDA
NEW
2024.11.16
FLOTでは、ソリューションサービスの一つ、中小企業向けトータールブランディングのサービス内容を見直し、この度名称も「+BRANDING(プラス・ブランディング)」と新たにし、サービス内容を全面リニューアルいたしました。
NEW
2024.10.23
最近はよく、販促物にも自前で撮影したお写真が気軽に使用されているのを目にします。
今では誰もが簡単にスマホなどで写真が撮れるので、気軽に利用できますよね。
その時に、あ〜、残念だなぁ……と思うことが多々あります。
2024.09.25
2000年代から、Google検索は私たちの生活に根付き、私は「ググる」ことを日常の一部として過ごしてきました。
Google検索は、情報収集の基本ツールとして、例えば、あるクライアントのウェブサイトのリニューアルをする際、Google検索を軸に、競合分析やキーワード選定、ウェブサイトの設計やコンテンツ戦略を練り上げるなど、私たちの仕事も支えてきました。
2024.08.05
約30年前の話になるが、私の就職活動における運命の出会いは、ある一冊の求職者向け専用パンフレットだった。
2024.06.25