「雨の日は車を磨いて」(五木寛之著)が好きだ。古い車に雨は大敵だけれど、非常にドラマチックにもなる。
この日某イタリア車でクラシックカーラリーに参加していた。2日間かけて400kmの工程を走るラリーだ。晴れたり雨降ったり忙しい天気ではあったがトラブルもなく無事ゴールにたどりついた。トラブルはないといったものの、雨漏りがするとか室内が曇るとかは通常モード。早池峰山越えの際の豪雨は想定外だった。ワイパーが、なめくじが歩くような速度でしか動かない。まるで雨に追いつかない。撥水剤はもちろん塗布済だが、全く追いつかない。
運営スタッフから「ワイパーの調子悪そうで大変でしたね」と声をかけられるものの、故障ではなくこの時代のイタリア車の標準装備なのは内緒だ(他オーナーの車で検証済)。車を実用度で測るなら赤点必須である。
それでもこんな大変な思いをしても乗る理由は、とにもかくにもひとえに「楽しい」からに尽きる。「楽しい」という価値は無限大だ。「楽しい」の前には「大変」すらもスパイスのひとつに過ぎない。
価値は大きく分けて2つある。
機能的価値と情緒的価値。
機能的価値は、品質・スペックなど対比や説明がしやすい基本価値。
情緒的価値は、物語・感情などココロを豊かにする価値。
機能的価値は数値化しやすいけど情緒的価値は主観的ゆえどうにも説明しにくい・・・
古い車が好きな理由は圧倒的に後者だ。
雨のイタリア車ほど運転して大変なものはないけれど、昔、雨の東北道で真紅のフェラーリテスタロッサに追い抜かれたことがある。盛大な水煙を立てながら、尾をひいて遠ざかっていく赤いテールランプがロマンチックで心がメロメロに崩れ落ちそうだった。
これぞ情緒的価値の真髄である。
Brand Control Adviser A.MAEDA
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