20年近く前になりますが、ユニバーサルデザインについて学ぶ機会がありました。当時は「バリアフリー」という言葉を上書きするように「UD(ユニバーサルデザイン)」という言葉が多く聞こえるようになり、グラフィックデザインでも「ユニバーサルフォント(書体)」が開発されて誤認が起こりにくい活字がたくさん生まれました。行政や教育機関からのデザインの依頼では、UDフォントの使用を原則とするものもでてきたほどです。
私も当時は「眼」が若かった故、見えにくい人の見え方は想像するしかなく、年長者のクライアントから「文字が見えない!」とデザインが却下されては修正し・・・を繰り返していた中、UDフォントやUDカラーの定義設定はありがたいものでした。
今では自分の「眼」も若さを失い間違いなく老眼になっていますが、強がって「見えているふり」をしてしまいます。これは、老眼をまだ認めたくない人がやりがちな行動です。最近は若年から老眼が始まる人も増えていますので、さらに「見えない」と認めたくない方は思っている以上に多いかもしれません。
そして、昔の年長者のように「文字が見えない!」と声をあげる代わりに、静かにそれを選ばなくなっていく・・・。
情報過多の昨今、最大マーケットのシニア層に効果的に情報を届け選んでもらうためには、「見やすい」「理解しやすい」表現が昔以上に大切であるといえます。
視認性が高いデザインの手法をいくつか例にあげると、
・明朝体よりもゴシック体の方が良い ・背景に色のついた白抜き文字は見えにくい・文章は5行程度に分割してあると理解しやすい などなど。
そんな視点で、私が「さすが」と唸って見ているのが、コピーライターの糸井重里氏の会社「ほぼ日」が運営しているアプリ「HOBOFUN」。スマホ画面の限られた面積のトップページで端的に伝えるコピーと書体、行の空き具合など、読者に対する優しさと温もりが伝わってきて秀逸だ、と、いつも感心してしまいます。
その丁寧さを持っている会社が勧めるものは、きっと良いに違いない、と、無意識に刷り込まれ、つい購入ボタンを押すのでした。
シニアに優しい表現を突き詰めると、お客様に寄り添う企業姿勢が見えてくるようですね。
Brand Control Adviser K.IGARASHI
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2024.04.25