ブランドの意味を知った日

エアコンの風は効きすぎるくらいで半袖から出た腕がキンキンに冷えている。もう何時間、車に乗っているのだろうか。2004年夏、私は出張で中国にいた。

エアコンとしばし現れる未舗装路のため、どうにも体調が思わしくない・・・。体調不良はでこぼこ道のせいばかりではない。食べ物があわないのだ。

美味しい中華料理を毎日食べられる・・・それは幻想だった。日本で食べている中華料理と中国で出される中華料理は別のものだった。

この地の衛生管理や品質管理は多分に大陸的だ。料理はとにかく油で炒めたものばかり。そうしないと100%お腹をこわすだろう。だいぶ変色したハムを挟んだ、ぱさぱさのサンドイッチやお菓子も危ないが、だいたいにして水が飲めない。ミネラルウオーターは売っているけど、店で出される氷にやられる。食べるものがおいしく食べられないと元気が出ないのは人間の摂理だろう。

体調悪く食欲もなく、冷たくなった腕をさすりながら、車窓から建設中の高速道路を見ていると、不意に「ビスケット食べないか?」と声をかけられた。別に食べたくはないが気分転換にはいいかもしれない、とひとつもらって口に入れたとたん、声が出た。

「うまい!!」

こんなにうまいビスケット、食べたことがない。もっとない?「いっぱいあるよ、箱ごとあげるよ。」ああ、あなたは神か聖者か。

受け取った箱にはなつかしい「ナビ●コ」のマーク。ああ、神はここにいたか・・・

ビスケットを食べながらふと思った。基本的に生ものは食べないのが世界の標準だ。そこには危険しかないからだ。なのに外国人に「寿司」や「刺身」など日本食が大人気なのはなぜか?食という生死にもかかわる部分で何故に信頼できるのか?

それが、ブランドなのかもしれない。

もう陳腐化した言葉だけど「安全安心」って大事なことだ。例えば生魚なんて食べる文化がない国にとって、寿司はあり得ない料理。しかし、それを安全安心だと全世界に認められている日本というブランドは絶大だ。

しかもブランディングってその商品だけ良くてもダメなのだ。食べる前から安心できるのがブランド。箱なんか開けなくてもそのパッケージから、ロゴマークから伝わる圧倒的な信頼感。メイドインジャパンというブランドはそれを作っている人たち、国までも含めた話なのだ。あの危険な生魚を美味しい料理に創り上げた人や文化。そこで作られたものは間違いないだろう。と。

企業という単位でも、これを実現できたら素晴らしいと思う。

「彼らが作るもの、提供してくれるものなら間違いない」

いつか田宮印刷&FLOTのブランドがそんな立ち位置になれれば嬉しい。

田宮印刷&FLOTがお手伝いした企業皆も一緒に、そんな立ち位置になれれば嬉しい。

※中国の話は2004年当時のものです。

Brand Control Adviser  A.MAEDA


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